近所の幼稚園に行っていたのですが、
急に保育園に転園することになった時の担任の先生の話です。
急な転園の理由は母の末期ガンが発覚したことでした。
当時は五歳で、人見知りでなかなか周りに馴染めずにいる私に、マンツーマンで紙芝居を読んでくれたり、ぬいぐるみを子供に見立てておままごとをしてくれてくれたり、とても気にかけてくれました。
数ヵ月後母は亡くなりました。
お葬式の時五歳だった私には、母の死ということが理解できておらず、祭壇にある母の写真を見て、「なんでお母さんの写真があそこにあるんだろう?」と不思議な気持ちでいました。
保育園の先生がお焼香に来てくれました。
私は「あ!先生だぁ」と思ってうれしい気持ちになりました。先生はいつもの笑顔ではなく、涙を流していました。
「何か怖いことが起こっているのかなぁ」と
とても不安になったことを憶えています。
母の入院中から、兄と私の面倒をみるために、祖母と同居することになりました。
母の死から2ヶ月後のこと、保育園で母の日へ向けて、お母さんの似顔絵書いてプレゼントしましょうと目の前に画用紙とクレヨンが用意されました。
「お母さんいないしどうしよう?」
何もできずに固まってしまいました。
周りはどんどん書き進めていくのに何もできないことに焦った私は
「お母さんいないんですけど」
と担任の先生に言いました。先生は
「おばあちゃんの顔を書くのはどうかなぁ?
ご飯作ってもらったりしてるんでしょ?」
母が死んで間もないのに、お母さんの似顔絵を書きましょうと言われた事は、かなり辛かったと今でも憶えています。
でも、先生が一緒にお婆ちゃんの絵を書いてくれたことが嬉しくて、傷ついた心が少し癒えたことも憶えています。