自分が幼稚園児の頃ですから随分と昔の話です。その日は、工作をする日で、多くの園児たちが楽しみにしている日でした。と言うのも、工作をする日は、天気が良ければ外で工作をするので、室内で過ごすことと違って近所の広場まで出かけられるのです。その日の工作は、画用紙を使ってころころと風を受けて疾走する車輪を作るものでした。みんな熱心に教わった通りに作り上げ、色を塗って、個性豊かな工作が出来上がりました。さて、ここからがみんなのお楽しみです。自分で作り上げた車輪で競争し、一番よく転がった人には賞が与えられるのです。全員がその賞欲しさに頑張って作り上げたのです。全員が位置について、合図を待って、手作りの車輪を一斉に転がします。動力は自然に吹く風だけが頼りです。そよそよと吹く風を上手に受けることが出来れば、かなりのスピードで転がり続けます。幼稚園の先生の合図で一斉に手を離れた車輪が転がり始めます。上手く風を受けることのできない大半の車輪は途中で止まってしまいますが、自分の作った車輪は、どこが良かったのか、ものすごい勢いでころころと転がり続け、自分で走って追いかけても追いつかないほどのスピードで走っていきます。ダントツの走りで優勝間違いなしなのですが、あまりに勢いがついてどこかに行ってしまいました。せっかく作って優勝したのに現物が手に残っていないことが本当に残念でした。しかし、暫くして、ゼーゼー言いながら担任の先生が追いかけて行ってくれて、はるか向こうの空き地に転がっていた車輪を見つけて持ってきてくれたのです。本当に嬉しくて、先生に感謝しました。帰宅してその旨を親に伝えるとすぐに幼稚園に出向いて感謝していたのを覚えています。園児もその親も先生も良い関係が続く素敵な幼稚園だったと今更ながら思っています。
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