加配保育士の仕事は、その専門性ゆえに、非常に多岐にわたり、そして何よりも、他の職員や保護者、専門機関との密接な「連携」が、その成果を大きく左右する。一人の子どもに深く寄り添いながらも、常に集団全体を見渡し、様々な人々と情報を共有し、協力体制を築いていく。その一日を追うことで、この仕事の具体的な内容と、そこで求められる高度な技術が見えてくる。加配保育士の朝は、担当する子どものその日の状態を把握することから始まる。奈良県の幼稚園では、保護者からの連絡帳や口頭での申し送りを通じて、家庭での様子、睡眠や食事、健康状態などを詳細に聞き取る。その情報を基に、その日一日の支援のポイントを頭の中で組み立てる。その際、必ずクラスの担任保育士と、「今日は〇〇な様子なので、活動中は少し配慮しましょう」「この活動では、こういう声かけをしてみます」といった、短い打ち合わせを行う。この朝の数分の情報共有が、一日を通して、担任と加配保育士が、一貫した方針で子どもに関わるための、重要な基盤となる。保育活動が始まると、加配保育士は、常に担当する子どもの少し斜め後ろにいるような、絶妙なポジションを保つ。その子の視線の先を追い、何に興味を示し、何に戸惑っているのかを観察する。そして、子どもが困っている素振りを見せれば、すぐに手を貸すのではなく、まずは「どうしたの?」と声をかけ、本人が自分の気持ちや状況を言葉にするのを待つ。本人がうまく表現できない場合は、「〇〇が難しいのかな?」とその気持ちを代弁し、解決のための選択肢を提示する。その支援は、常に「本人の主体性」を引き出すことを目的としており、先回りして全てをやってあげる「お世話」とは一線を画す。クラス全体での活動では、加配保育士は、担任保育士の意図を汲み取り、その活動のねらいが、担当する子どもにも達成されるよう、環境を調整する。例えば、製作活動でハサミを使うのが苦手な子には、あらかじめ切りやすいよう紙に厚みを持たせたり、握りやすい補助付きのハサミを用意したりする。その小さな工夫が、子どもの「できた!」という達成感に繋がり、自己肯定感を育む。この時、加配保育士と担当する子どもが、クラスから孤立した「特別なコーナー」を作ってしまうのではなく、あくまでクラス全体の活動の流れの中に、自然な形で溶け込めるよう配慮することが、インクルーシブ保育の要となる。午睡の時間や食事の時間も、重要な支援の場面だ。感覚の過敏さから、特定の食事が苦手な子や、周囲の物音が気になって、なかなか寝付けない子もいる。加配保育士は、そうした一人ひとりの特性を理解し、その子が安心して過ごせるような個別対応を行う。一日の終わりには、再び担任保育士と、その日の子どもの様子や成長した点、課題などを共有し、日々の記録として詳細に残す。そして、保護者には、単に「今日も元気に過ごしました」ではなく、「今日は、お友達とのやり取りで、こんな素敵な言葉が言えましたよ」といった、具体的でポジティブなフィードバックを伝える。この丁寧な報告が、保護者の安心感と、園への信頼を育む。加配保育士の仕事は、一人の子どもと向き合う深い専門性と、チームの一員として調和する協調性の、両方が求められる、まさに職人技なのである。
チームで支える、加配保育士の具体的な仕事内容と連携の技術