その日、私が担当することになったのは、明日、心臓の大きな手術を控えた五歳の男の子でした。彼はプレイルームに来ても誰とも話さず、部屋の隅で膝を抱えているばかり。その小さな背中からは、言葉にならないほどの不安と恐怖が伝わってきました。医師や看護師からの説明は受けているものの、彼の中で手術というものがどれほど恐ろしいものとして映っているのか、想像に難くありませんでした。私は無理に話しかけることはせず、少し離れた場所で、一体のクマのぬいぐるみを使って遊び始めました。保育士の採用を積極的にぬいぐるみの胸に絆創膏を貼り、「クマさん、ドキドキするね。でも大丈夫だよ、すぐ元気になるからね」と優しく声をかけ続けました。しばらくすると、彼はゆっくりとこちらに近づいてきました。そして、小さな声で「クマさん、痛い?」と尋ねたのです。それが、彼と交わした最初の言葉でした。私は「ちょっとだけチクッとするかもしれないけど、眠っている間に終わるんだよ。目が覚めたら、お母さんがそばにいるから大丈夫」と、ぬいぐるみに語りかけるように答えました。彼は私の隣に座ると、おもちゃの聴診器をぬいぐるみの胸に当て、じっと耳を澄ませていました。その後の時間は、二人でただ静かに、ぬいぐるみの「手術ごっこ」を続けました。翌日、手術室に向かうストレッチャーの上で、彼は私の手をぎゅっと握りしめ、「クマさんみたいに、頑張る」と言ってくれました。手術が無事に成功し、彼が आईसीयू から戻ってきた時、彼のお母さんから「先生がいてくれて、本当によかったです」と涙ながらに言われました。特別なことをしたわけではありません。ただ、遊びを通して彼の心に寄り添っただけです。あの一日は、この仕事の意義を私に教えてくれた、忘れられない一日となりました。医療保育士は、小児医療の現場でその専門性が高く評価され、需要が増している職業ですが、なるためにはどのようなステップが必要なのでしょうか。まず、大前提として、国家資格である「保育士資格」の取得が必須となります。保育士資格は、子どもの発達、心理、保健、福祉に関する幅広い知識の土台となるため、医療保育の分野に進む上での出発点と言えます。大学や短大、専門学校の保育士養成課程を修了するか、保育士試験に合格することで資格を得ることができます。しかし、医療保育士として働くには、この保育士資格に加えて、さらに医療に関する専門的な知識とスキルが求められます。具体的には、子どもの病気や障がいに関する知識、医療用語の理解、グリーフケア(死別の悲しみに寄り添うケア)、そしてチーム医療の一員として多職種と連携するためのコミュニケーション能力などです。これらの専門性を高めるために、多くの人が民間の認定資格である「医療保育専門士」の取得を目指します。この資格は、特定の学会が主催する研修を受講し、試験に合格することで得られ、医療保育の専門家であることの証明となります。資格取得の過程では、小児医療の現場での実習も含まれており、実践的なスキルを磨くことができます。医療保育士の求人は、大学病院やこども病院、小児科クリニックなどから出されますが、まだ配置が義務化されていないため、求人数は限られているのが現状です。そのため、病院でのボランティア活動などを通じて現場経験を積み、ネットワークを築いておくことも有効な手段となるでしょう。子どもたちの命と心に寄り添う強い意志と、常に学び続ける探求心が、医療保育士への道を切り拓く鍵となります。